アルヴァアアルト建築 カントラ -Alvar Aalto’s Kantola-
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建築家アルヴァ・アアルトによって設計されたスニラ(Sunila)はフィンランドの東海岸で最も国際的に有名な建築群だ。
スニラ工場エリアには、工場長の住居であったカントラとビーチサウナに加え、12棟の長屋とアパートメント、そして建築的に興味深い、住民たちの共有棟がある。
かつて世界で最も美しい工場と称されたスニラとその住宅エリアはアアルトの国際的なモダニズムの象徴となった。
アルヴァ・アアルトが設計した美しく広々とした機能美の住宅カントラ(Kantola)は1980年代までスニラ工場長の住居として使われていた。
カントラはアアルトの総合的なデザイン思考と、彼の建築様式の典型的な要素を体現している。
カントラの建築にはアアルトの最も有名な作品のひとつである「マイレア邸」の面影が見られる。空間と景観が徐々に変化していく様子は、アアルト様式の典型的なものだ。
家のメインスペースは広々とした吹き抜けのホールで、そこから左側にダイニングホールのあるパーラーへと続いている。パーラーの暖炉の隣には、海岸の景色を望むオーク材の枠の大きな窓があり、裏口からはパーゴラ、松の庭へと小道が続いている。
カントラには大会議室が1室と小会議室が2室あり、合計60名を収容出来る。上階には明るいホール、広々としたバルコニーが2つ、ベッドルームが4つ。ベッドルームは各部屋コンセプトカラーが異なっているが、統一感があり、アアルト建築を一層引き立てている。キッチンは機能的でイベント用に約100名分の食器と冷蔵室も完備している。
元々工場長の邸宅だったこともあり、スニラ工場のロゴが彫られた銀食器などは今もそのまま残されていいる。贅沢にも、この食器を使うことが出来るのはカントラの歴史あってこそ。
長い時を経てカントラは1990年代末に修復された。自然光の柔らかさと美しさ。曲線美の優しさ。アアルトの椅子に腰掛けると、思わず肩の力が抜けるような、心地の良い空間は広大な邸宅であるカントラでも変わらない。
贅沢な空間のはずなのになんだか懐かしい。ここの空間に身を置く経験は何物にも変えがたい。カントラは現在、会議、研修、各種イベントなどに利用できる。また、事前予約により宿泊することも出来、ベッドルームは今でも人々を暖かく迎えている。
団体で利用の際には、地元の味覚と建築家夫婦のお気に入りの料理を楽しめる建築家ブランチもオーダーが可能。(要予約)カントラは持続可能な観光の原則を守り、責任ある観光活動への取り組みとして認証を取得している。
-スニラについて
フィンランドを代表するアルヴァ・アアルトは1936年から1939年にかけてスニラパルプ工場と住宅地区を設計した。
スニラは森に近い、美しい郊外の地域で、巨匠建築家の最大のプロジェクトだ。新しいパルプ工場と住宅地はほぼ手付かずの土地に造られた。
道路、鉄道、橋、電線など、多くの工事が必要で、最盛期には建設現場の労働者数は1750人に達していたようだ。
パルプ工場は海岸が急峻で港湾として適していた為、ピョーティネン島に建設された。1936年6月に着工、1938年5月に最初のパルプベールが生産される。
住居区は本土に建設された。建設の第一段階では工場長の住居であるカントラ、エンジニアの長屋ランタラ、職長の長屋マケラ、労働者のアパートマンティラとホンカラ、そして必要なメンテナンス用の建物が完成。これらの建物が位置していた地域の南側はヴァリニエミ。住宅建設の第二段階では12棟の戸建て住宅が建てられた。
スニラ製材所の建物は、アイノ・アアルトとアルヴァ・アアルトの設計に基づき、新しいパルプ工場のコミュニティーで利用するために改築された。
古い建物は上級管理職と中級管理職のためのクラブ、幼稚園、図書館として改修。製材所のボランティア消防署の建物は労働者のための共同スペースに生まれ変わり、「ピルッティ」として知られるようになった。
戦後、クーセラ(1947)、ジュレラ、ルンコラ(1952-1954)のアパートが建設された。
-スニラに住む
スニラの住民は製材所の古い木造住宅バラックと、アルヴァ・アアルトが設計した新しいアパートに住んでいた。
当時の労働者階級の家族の生活は、井戸から水を汲み上げ、トイレは外の別の小屋に設置された古いバラックから始まることが一般的であった。
スニラでは彼らも新しいアパートに引っ越すことが出来た。この夢のような引越しは天国の入り口に例えられたそうだ。大きな窓と白い壁に反射する光を思い浮かべれば、その比喩は明らかである。
アアルト設計の住宅街にあるアパートメントのほとんどは30~35㎡のワンルームアパートメントと45㎡のツールームアパートメント。アパートメントの設備は当時としては珍しく、十分な広さがあり、ツールームアパートメントは6人家族でも住んでいた。
職長用長屋マケラには85㎡のアパートがあり、エンジニア用長屋ランタラには180-280㎡のアパートがある。工場長用長屋カントラは450㎡で、応接室としても使用されていた。
このように、スニラでは伝統的な階層構造が進歩性と現代的なデザイン哲学を伴って支配していおり、今もなお、建築群から想像することが出来る。
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